BEPS Base Erosion and Profit Shifting 税源浸食と利益移転
I.
BEPS とは?
A. 基本
BEPS (Base Erosion and Profit Sharing) は日本語で税源浸食と利益移転のことを言います。グローバル企業が二か国以上のグループ会社の間で取引をし、グループ全体で租税回避を行うことをいいます。要は、税率が高い国から税率の低い国へ所得を移転させ、納税を逃れようとすることです。
ニュース等でもこの問題は取り上げられていて、大手企業、例えば、アマゾン、マクドナルド、イケア、グーグルやアップル等は所得に対しての納税金額が著しく低いことで有名です。言ってみれば、これら大企業の税務担当が優秀なのかという反面、世界を代表する企業が租税回避をしているということで、問題視され非難されています。
B. 租税回避
- 知的財産 (intangible property)や商標権 (trademark)等を税率が低い国へ移転し、使用料 (ロイヤリティ)を支払う
- 企業内貸付 (intracompany loan)を行う
- インバージョン (inversion) を行う
- インバージョン とは、本社を税率の低い国へ移転すること
- 移転価格調整
違法でないといえ、税制度や租税条約のループホールをついた手法と非難されています。そこで、経済協力開発機構(OECD)はこれらグローバル企業の過度な節税を防ぐためのBEPS対策として、15項目の行動計画 (action plan)を発表しました。
II.
BEPS 対策の行動計画
1. 電子商取引課税
Address the
tax challenges of the digital economy
電子商取引により、他国から遠隔で販売、サービス提供等の経済活動ができることに鑑みて、電子 商取引に対する直接税・間接税のあり方を検討する報告書を作成。
2.
ハイブリッド・ミスマッチの効果の無効化
Neutralize the effects of hybrid mismatch arrangements
Neutralize the effects of hybrid mismatch arrangements
ハイブリッド・ミスマッチとは、金融商品や事業体に対する複数国間における税務上の取扱いの差異であり、これを利用した税負担の軽減が問題視されている。ハイブリッド・ミスマッチの効果を無効化する国内法上の措置を勧告するとともに、モデル条約の規定を策定する。
3.
外国子会社合算税制の強化
Strengthen CFC rules
Strengthen CFC rules
外国子会社合算税制(一定以下の課税しか受けていない外国子会社への利益移転を防ぐため、外国子会社の利益を親会社の利益に合算)に関して、各国が最低限導入すべき国内法の基準について勧告を策定する。
4.
利子等の損金算入を通じた税源浸食の制限
Limit base erosion via interest deductions and other financial payments
Limit base erosion via interest deductions and other financial payments
支払利子等の損金算入を制限する措置の設計に関して、各国が最低限導入すべき国内法の基準について勧告を策定する。 また、親子会社間等の金融取引に関する移転価格ガイドラインを策定する。
- 有害税制への対抗OECDの定義する「有害税制」について
Counter harmful tax practices more effectively, taking into account transparency and substance
① 現在の枠組み(透明性や実質的活動等に焦点)に基づき、加盟国の優遇税制を審査する。
② 現在の枠組み(透明性や実質的活動等に焦点)に基づき、OECD非加盟国を関与させる。
③ 現在の枠組みの改定・追加を検討。
- 租税条約濫用の防止
Prevent treaty abuse
条約締約国でない第三国の個人・法人等が不当に租税条約の特典を享受する濫用を防止するためのモデル条約規定及び国内法に関する勧告を策定する。
- 恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止
Prevent the artificial avoidance of Permanent Establishment (PE) status
人為的に恒久的施設の認定を免れることを防止するために、租税条約の恒久的施設の定義を変更する。
- 移転価格税制(①無形資産)
Aligning
transfer pricing outcomes with value creation: intangibles
親子会社間等で、特許等の無形資産を移転することで生じるBEPSを防止するルールを策定する(移転価格ガイドラインの改訂)。
また、価格付けが困難な無形資産の移転に関する特別ルールを策定する。
また、価格付けが困難な無形資産の移転に関する特別ルールを策定する。
- 移転価格税制(②リスクと資本)
Aligning
transfer pricing outcomes with value creation: risks and capital
親子会社間等のリスクの移転又は資本の過剰な配分によるBEPSを防止する国内法に関する移転価格ガイドラインを策定する。
- 移転価格税制(③他の租税回避の可能性が高い取引)
Aligning transfer pricing outcomes with value creation: other high-risk transactions
非関連者との間では非常に稀にしか発生しない取引や管理報酬の支払いを関与させることで生じるBEPSを防止する国内法に関する移転価格ガイドラインを策定する。
- BEPSの規模や経済的効果の指標を政府からOECDに集約し、分析する方法を策定する
Measuring and monitoring BEPS
- タックス・プランニングの報告義務
Require
taxpayers to disclose their aggressive tax planning arrangements
タックス・プランニングを政府に報告する国内法上の義務規定に関する勧告を策定する。
- 移転価格関連の文書化の再検討
Re-examine transfer pricing documentation
移転価格税制の文書化に関する規定を策定する。多国籍企業に対し、国毎の所得、経済活動、納税額の配分に関する情報を、共通様式に従って各国政府に報告させる。
- 相互協議の効果的実施
Make dispute resolution mechanisms more effective
国際税務の紛争を国家間の相互協議や仲裁により効果的に解決する方法を策定する。
- 多国間協定の開発
Develop a multilateral instrument
BEPS対策措置を効率的に実現させるための多国間協定の開発に関する国際法の課題を分析する。その後、多国間協定案を開発する。
各国の税制改正等にこれら行動計画に沿ったものが組み込まれているかと思います。
各国の税制改正等にこれら行動計画に沿ったものが組み込まれているかと思います。
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