Global Intangible Low-Taxed Income (GILTI) の基本



GILTIとは、簡単にまとめると、米国企業の無形固定資産 (IP; intangible property)の海外流出を防止する目的で、米国国外での特定子会社の所得について米国で課税するシステムです。

I.            GILTI合算課税


A.   誰がGILTIの対象となるの?


米国株主は外国に子会社を持っていても、その外国子会社から配当等がない限り外国子会社の所得について米国で課税をされるということは従来ありませんでしたが、2017年の税制改正によってGlobal Intangible Low-Taxed Income (GILTI) ["guilty"のような発音]が導入されて、外国子会社からの配当に拘わらず、米国親会社が特定外国子会社の一定所得を合算してアメリカの法人課税対象とするルールを設けました。

201811日以降に開始する外国子会社の事業年度から適用されています。

 

GILTIの対象となる要件やGILTIの計算方法を詳しくみていきましょう。

 

B.   米国株主とは?


GILTI合算課税をしなくてはならない米国株主とは、

特定外国法人 (CFC; 以下詳しく要件かいてあります)の議決権・株式の価値の10%以上を直接または間接的(みなし含む)に保有する米国人(米国法人や米国パートナーシップを含みます)を指します。

 

  • 米国個人・米国法人 (C-corporation & S-corporation)・米国パートナーシップが対象となります。
  • CFCの事業年度の終了時点での米国株主に合算課税されます。

 

C.   CFC;特定外国法人とは?


特定外国法人 (Controlled foreign corporation; CFC)とは外国法人で:

(a) 50%以上の議決権・株式の価値が米国人(米国法人や米国パートナーシップを含みます)に保有されていて、かつ、

(b) 各米国株主の保有が10%以上である外国法人を指します。

 

D.   GILTIの具体的計算方法


要約すると、GILTI Net Tested Income - Net Deemed Tangible Income Returnで算出します。

これだけ言われてもわからないので、具体的なGILTI合算課税の計算方法は以下の通りです:


1.     Tested Income又はlossを各CFCで計算します。Tested income (lossも同様)は、アメリカの税務上のルールに則って課税所得 (E&P; earnings and profit)を計算した金額を指します。Tested income/lossを計算する上で、繰越欠損金控除 (NOL; net operating loss deduction)は認められていません。また、Subpart F所得や高税率CFC (high foreign tax exception; 実効税率18.9%以上)は原則としてtested incomeからは除外されます。

2.     CFCtested income又はtested lossを合算し、net tested incomeを算定します。Tested losstested incomeを上回る場合、GILTI所得はゼロという取り扱いになりGILTI欠損金を出すことは認められていません。

3.     Net tested income からnet deemed tangible income returnを差し引きます。

Net deemed tangible income returnとは、tested incomeを計上しているCFCが保有する有形償却資産 (tangible depreciable property)の簿価(QBAI; qualified business asset investment)10%をかけた金額から一定の支払い利息を差し引いた金額を指します。

QBAIとは、特定有形資産のうち、CFCの事業に使用されており、かつ、米国税務上の減価償却をとれる資産の米国税務上の簿価を指します。QBAIは事業年度中の四半期ごとの平均値を算定して計算します。

また、QBAIの米国税務上の簿価はADS (alternative depreciation system)を用いて計算します。

4.     上記によって算出した金額がGILTI inclusion合算課税対象のGILTI所得です。

5. GILTIに係る外国税額をグロスアップ (section 78 gross-up)をします。

6.     GILTI所得(グロスアップ後)は米国法人であれば、最大GILTI所得の50%まで(2025年12月31日より後に始まる事業年度は37.5%に下がります)の控除が認められているので、法人税率が通常21%のところ、実質10.5%(2025年12月31日より後に開始する事業年度については、13.125%)で合算課税されます。

7.     更にはGILTI所得に対して最大80%までの外国税額控除 (foreign tax credit)がとれます。米国個人にはこれらの控除は基本的に認められていません。GILTI所得 (GILTIバスケット) に係る外国税額控除は繰越ができません。外国税額控除の算定時には、米国株主がGILTIバスケットへ割り当てる必要があります。外国税額控除について詳しくは別の記事にて記載します。




ご質問やお問合せは、メールにてお問合せください。



Powered by Blogger.