アメリカの売上税・使用税について

 I.            アメリカの売上税・使用税 Sales and Use Tax


A. 基本


アメリカのSales and use tax(売上・使用税; 以後SUTとします)は、日本の消費税と似ていて、課税対象の商品(サービスも含みます)に対して課税されます。


通常、最終消費者 (final consumer)に対して商品を販売する際に、売る側がSUTを徴収して、各州へ申告して納付します。

 

アメリカのSUTは日本の消費税とは違って、連邦税は含まれていません。州や市によって税率や細かいルールが異なります。


また、州ごとのルールなので、州によってはSUTがない州(Alaska, Delaware, Montana, New Hampshire, Oregon; 但しアラスカは市レベルでの売上税が課税されます)もあります。この場合、使用税 (use tax) がかかるケースもあり得るので注意が必要です(後述しています)。

 

 

B.   どの取引にSUTはかかるの?

 

事業者は『ネクサス』 (nexus;後述)があると認められる州で、課税対象となる商品を売る場合、売上税を徴収して収める(申告)義務があります。よって、まず、事業者はネクサスがある州を見極めます。

 

そして、ネクサスがある州へ売上税の登録をし、許可証(sales tax permit; seller's permit; sales tax license) を申請します。

 

許可が下りると同時にSUTの申告頻度 (年に一回、四半期ごと、半年ごと等)及び申告期限が通告されます。

 

前述の通り、SUTは最終消費者に対して課せられる税金なので、事業者の仕入れに対して(中間卸業者など)SUTを支払う必要がありません。原則として、仕入れ業者に再販許可証 (resale certificate) を提示すれば免税となります。再販許可証も基本的に各州に申請して取得します。


また、これも前述の通りですが、州によって課税対象となる商品が異なります。結果としては、ネクサスがあると認められる州のルールを確認する必要があります。

 

C. ネクサスって何?



ネクサスとは、ラテン語で『結びつき、関連』を意味します。税法上でのネクサスは、課税するための事業上の関連性を意味します。各州においてネクサスの定義は違いますが、原則として、関連性が認められれればネクサスがあるとして取り扱われ、売上税の申告・納付義務があります。

 

ネクサスの基準・定義は州によって違いますが、一般的に、今までは物理的な拠点や関連性 (substantial nexus, physical presence)があればネクサスがあるとして売上税の徴収義務がありました(例えば、州内に事務所を構えている、支店がある等)。

 

しかし、20186月のウェイフェア (South Dakota v. Wayfair, Inc.)の米国最高裁判所での判決で、physical presenceが実質的な関連性の絶対条件ではなく、economic presence(後述)も実質的な関連性として認められました。この判決を機に、多くの州がphysical presenceがなくともeconomic presenceがあるとみなされれば売上税の徴収義務を課すルールを導入しました。

 

Economic presence (economic nexus)の条件は各州にて違いますが、原則として、州内での取引額または取引数を基準としているケースが多いです。

 

具体的な例として、カリフォルニア州とニューヨーク州のeconomic nexusの定義をみていきましょう。

 

カリフォルニア州では、201941日以降、州内での取引額が$500,000を超える場合economic nexusが発生すると定義しています。 Economic nexusが発生した日に州に登録・申請する義務があります。

 

ニューヨーク州では、2018621日以降、下記①と②の両方を満たす場合 economic nexusが発生すると定義しています:

①州内での取引額が$500,000を超える場合

②取引数が100を超える場合

 

NY州でeconomic nexusが発生してから30日以内に登録・申請し、それから20日以内に売上税を徴収する義務があります。

 


ウェイフェア判決の影響が大きいのが e commerceインターネット事業者です。例えば、デラウェア州に拠点がある販売者が、カリフォルニア州の顧客に商品を売った場合、前述のカリフォルニア州のeconomic nexusを満たしている販売者であれば、カリフォルニア州の売上に対して売上税を徴収し、申告・納付することが必要です。

 

D. 使用税について


使用税は売上税と同じ税金ですが、何らかの理由で売上税が課せられていない商品に対して最終消費者が自ら納付・申告する税金を指します。例えば、売上税がない州で買った商品を売上税・使用税がある州にて使用(消費)した場合、原則として、最終消費者は使用税を申告・納付する義務があります。

 

E. 最後に

 

売上税のネクサスと所得税のネクサスは基準が違うので注意が必要です。この記事では売上税のネクサスについて書いています。



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