ユニキャップUNICAPについて


I.            税務上の棚卸資産 UNICAP ユニキャップ



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A.   棚卸資産の基本


棚卸資産 (inventory) には以下の種類があるかと思います。

  • 商品: 仕入れた商品の在庫
  • 製品: 自社で製造した製品の在庫
  • 原材料: 自社で製造するために必要となる材料の在庫
  • 半製品: 自社で製造したもののうち、製造中のもので、そのままでも販売できる在庫
  • 仕掛品: 自社で製造したもののうち、製造中のもので、そのままでは販売できない在庫
  • 未成工事支出金: 自社で行っている工事や建築で未だ完成していなもの
  • 貯蔵品: 事務用消耗品や消耗工具器具備品等

これらは、期末の財務諸表を作成する際に棚卸資産として資産計上されます。会計基準によって作成した財務諸表上の棚卸資産をベースに米国税務上は、UNICAP (uniform capitalization rules)ユニキャップという規定によって税務上の棚卸資産を計算します。


税務上認められている棚卸資産の評価方法には、以下の2つがあります:


   原価法 (cost method)

   低価法 (lower of cost or market method)


税務上どちらの棚卸資産の評価法を使っていたとしても、ユニキャップは基本的に適用されますので、会計上と税務上の棚卸資産の評価額は異なってきます。

また、棚卸資産の方法について以下の方法があります:


   先入れ先出し (first in first out; FIFO)

   後入れ先出し (last in first out; LIFO)

   個別法 (specific identification)

   加重平均 (weighted average)


税務上、LIFOを採用する条件として、会計上でもLIFOを採用していることが条件になっていたり、低価法との併用ができない等の決まりがあります。また、特定の業種によって、税務上特別に認められた棚卸方法もあります。


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B.   UNICAPとは?


UNICAPとは、米国税務上、会計上よりも広い範囲で、販売管理費や間接費等を売上原価や棚卸資産の一部として資産計上を義務付けるルールです。UNICAPは米国税法上の263A項に定められていることから、業界では263Aとも言われます。


対象となるのは:


   事業用に製造された動産・不動産

   再販目的で取得した動産・不動産


適用が免除されるケース:


   小規模業者

a.    ここでいう小規模業者とは、過去3年間の平均売上が$25 million 以下の場合(1

   長期工事契約で建設される資産

   非営利目的活動に使用される資産


1

こちらのルールは、2017年の税制改革で変更されました。税制改革前は小規模業者として取り扱われるには、平均売上が$25 millionではなく、$10 millionでした。さらには、再販業者に限られていましたが、改定後は製造業者も免除の対象となるため幅広く多くの納税者が恩恵を受けられるようになりました。


ちなみに、改定前には小規模業者に該当せずUNICAPを適用していたけど、改定後に小規模業者に該当するようになって、UNICAPが免除になった場合、IRSへ変更申請をする必要があります。


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C.   UNICAPの仕組み



UNICAPの製品原価の対象となるものは:

   直接費 (direct costs)

   間接費 (indirect costs)があります。


上記の例としては、光熱費・消耗品・修繕費・資材調達費用・梱包費・保険料等が挙げられます。

また、UNICAP上の製品原価から除外されているものの例として、宣伝広告費・製品配送料・試験研究費・所得税・製品保証費用などが挙げられます。これらは、原則として費用として計上できます。

上記の間接費の中に混合サービス原価 (mixed service costs)というものがあり、製造や販売に関連するUNICAP上の製品原価とそれ以外の原価が混ざったものを指します。例えば、人事部、経理部、法務部などで発生します。人事部で管理する製造工場の作業員へ対する人事管理費などが具体例です。

この混合サービス原価は、納税者がとっている原価計算方法と同様の方法(2)によって、下記a. & b. に分けます。

a.    製品原価

b.    期間原価


上記a. 製品原価に配分された額を税務上の製品原価に加えます。

2

混合サービス原価を配分する方法として、いくつかの方法が認められていますが、その中でも簡便法 (simplified mixed service cost method) を使うこともできます。



製品原価への配分額=混合サービス原価×配賦率 (allocation ratio)



·         労務 (labor costs)の場合の配賦率:

UNICAP上の資産計上対象の労務費÷総労務費


·         製造原価 (production cost)比率の場合の配賦率:

UNICAP上の製造原価÷総営業経費(製造原価+販売管理費等の合計)


II.          UNICAPの計算の仕方


A.   計算式



下記の合計と、会計上の製品原価との差額を税務上の売上原価と棚卸資産に配分します(3)。


   混合サービス原価のうち配賦された製造原価

   その他のUNICAP上の製品原価

3

税務上追加で製品原価となるもののうち棚卸資産として資産計上する額を計算する方法として、いくつかの方法が認められていますが、その中でも簡便法を使うこともできます。


·         製造業の場合の簡便法(simplified production method)


会計上の期末棚卸資産残高×UNICAP上の追加製品原価÷会計上の製品原価額


·         販売業の場合の簡便法(simplified resale method)


会計上の期末棚卸資産残高×(倉庫費用+ハンドリング費用)÷(棚卸資産期首残高+今期棚卸資産購入額



B.   まとめ


まずは会計上の製品原価を把握すること


会計上資産計上されていない混合サービス原価などの間接費について、税務上製品原価に含めるものを算出


税務上製品原価となるもののうち、資産計上する額を算出




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