アメリカの贈与税 Gift Taxについて
I.
アメリカの贈与税 (Gift Tax)
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a.
贈与税ってどんな税金?
無償又は適正価格より著しく低い価格で金銭または資産を贈与した場合にかかる税金です。
b.
誰が支払うの?
アメリカでは、贈与した側が贈与税を支払います。また、贈与税の申告義務も贈与者です。
c.
生涯非課税枠って何?
生涯を通して$12,060,000(2022年の場合)までは贈与税がかかりません。また、この金額は相続税 (estate tax)の非課税枠と合算で計算されますので、遺産として残しておく財産と生涯で贈与する資産の合計額が$12,060,000未満だと贈与税・相続税を支払わなくて済みます(申告は必要になるケースもあります)。非課税限度枠はインフレーションで更新されるのでご注意ください。
非課税枠が大きいので、結果としては多くの人が贈与税の申告を行ったとしても実際に支払うことはありません。
d.
年間非課税枠
一年間での贈与をする相手一人につき、$16,000(2022年の場合)までが非課税枠となっています。一人につき$16,000以上の贈与をすると、贈与税の申告をしなくてはなりません。但し、累積贈与額が上述の生涯非課税枠を超えてない場合は、申告義務はありますが実際に贈与税を支払うことはありません。
また、夫婦それぞれ$16,000までが非課税となるので、贈与する相手が同じでも夫婦合わせて$36,000までが非課税枠として取り扱われます。
また、注意しておきたいのが、贈与をしたとしても個人の所得税
(individual
tax, Form 1040)では控除できないという点です。
e. 贈与税の対象とならないもの
1. 教育費や医療費
授業料(tuition)や医療費などは贈与税の対象となりませんが、教育機関・医療機関に直接支払っていることが適用除外要件となっています。
2.
配偶者
配偶者が米国市民の場合は、配偶者に対する贈与は贈与税の対象となりません。
配偶者が米国市民でない場合、年間の贈与非課税枠は$164,000(2022年の場合)です。
3. 政治団体や非課税団体
政治団体への寄贈や501(c)(4), 501(c)(5), 501(c)(6)団体への寄贈
f. 申告はどうするの?
贈与税の申告はForm 709で行います。
個人所得税の申告を夫婦合算で行っていても、贈与税の申告は別途で行う必要があります。
申告期限は翌年の4月15日までです。但し、6か月の延長が認められています。個人所得税(Form 1040)を延長した場合は、Form 709も自動的に6か月延長されますが、個人所得税を延長しない場合は、Form 8892と4月15日までに提出して申告期限を10月15日まで延長申請します。
g. ケーススタディ
Q. 日本人ですが、グリーンカードでアメリカに10年以上住んでいます。配偶者も同じく日本人ですが、似たようにグリーンカードでアメリカに10年以上住んでいます。この場合は、日本の贈与税とアメリカの贈与税どちらを調べればいいのでしょうか?
A. 贈与する側、受け取る側どちらも日本の国籍をもっている場合でも、一定の要件を満たす場合(米国グリーンカード保持者で米国に一定期間以上居住している等)、米国内の資産の贈与であれば日本の贈与税がかからず、米国の贈与税のみの課税対象となります。
但し、日本国内の財産ですと国籍・居住地に関係なく原則として日本の贈与税の対象になりますので確認が必要です。
Q. 日本に住む親せきから贈与を受けましたが、どのような税金がかかりますか?
A. 贈与を受けた資産の合計が$100,000を超える場合、Form 3520を提出する必要があります。申告期限は個人所得税と一緒で翌年の4月15日までです。(個人所得税を延長した場合、Form
3520も延長されますので10月15日が延長申告期限になります)。また、通常は贈与で受け取ったものについては個人所得税はかかりません。
贈与されたものが、米国内の資産である場合は贈与税の対象となります(前述の生涯非課税枠適用)。
ここで注意したいのが、通常では贈与を受けた側は申告義務はありませんが、外国人等(米国以外の個人や法人等)から受け取った贈与については、贈与をした側ではなく贈与を受け取った側に申告義務があることです。申告を怠ると重い罰金等が科せらるのでご注意ください。
また、以下の州については州レベルで贈与税を課税する場合があるので、申告・課税要件についても詳しくみる必要があります。
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コネチカット 州(Connecticut)
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ミネソタ州(Minnesota)