アーニングス・ストリッピング 163(j) 支払い利子の損金算入限度

I.            Earnings Stripping アーニングス・ストリッピング


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A.   アーニングス・ストリッピングとは?


内国歳入法IRC (Internal Revenue Code) 163j項に定められている、アーニングス・ストリッピングルールは日本語で過大支払利子損金算入制限といいます。一定の要件を満たす場合、利子の損金算入が制限されてしまう制度です。

2017年の税制改正で大幅に変わりましたが、以前は国外関連者からの借入金及び国外関連者による保証等の付された第三者からの借入金に関する支払い利子について、期末日の負債対資本比率が1.5:1を超える場合、超過利子額 (excess interest expense) 又は非適格利子 (disqualified interest) のうち、少ない方が損金不算入となっていました。

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B.   新しいアーニングス・ストリッピングのルール


2017年の税制改正で改められたアーニングス・ストリッピングルールでは、原則として、一課税年度において損金算入できる利子費用は以下のように定められました。

純支払利子 (net interest expense) の損金算入限度額=調整課税所得 (adjusted taxable income)  ×30

純支払利子は、事業上の支払利子から事業上の受取利子と一定の資産購入 (floor plan financing interest) に係る借入利子を差し引いた金額です。なお、OID (original issue discount)や負債発行費 (debt issuance costs) 等、幅広いものが含まれます。

また、原則として、163j項は、その他の条文で損金算入できる利息とされています。簡単にいうと、その他の条文で所得・損金算入できると認められた利子に対して163j項が適用されます。

連結グループの場合、連結ベースで制限額を計算します。

調整課税所得は、EBITDA類似額あるいはEBIT類似額(下記1を参照ください)の30%を損金算入限度額とすることが定められました。詳しくは以下の計算式です。

   連邦課税所得 (federal taxable income)ーこれは税務上の所得を指します
   +/- 事業に直接関係しない所得と費用
   +/- 事業上の支払利子と受取利子
   + 繰越欠損金 (net operating loss)
   + 適格事業所得に係る所得控除 (section 199A deduction)
   + 減価償却と減耗償却(1、注2
   +繰越・繰戻キャピタルロス

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1
2022年1月1日以降に開始する事業年度については、上記の減価償却と減耗償却は計算式から除外されます。

2
減価償却費や減耗償却費でCOGS (cost of goods sold; 売上原価) に含まれるものは除かれます。

C.   適用開始日と適用除外


新しいアーニングス・ストリッピングルールは、2018年1月1日以降に開始する事業年度に適用されます。

過去3年の平均総収入が$25 million以下の小規模事業者については、適用が免除されています。

損金不算入となった利子(過大支払利子損金不算入額 excess business interest expense EBIと略します)は、繰越が無期限に認められています。翌年以降、控除限度に余裕があれば、繰越利息が損金として計上できます。その場合、損金算入できる順番は、当年度に発生した利子が先で、その後は先入先出法 (FIFO) が適用されます。

また、EBIは、NOLと同様に買収された場合などは、Section 382のルールが適用されます。尚、旧アーニングス・ストリッピングルールの時に生じていた超過制限額については2018年以降は繰越されません。


改正前と違って、貸付者がアメリカ国内法人だったり、非関連者であった場合でもこのアーニングス・ストリッピングルールは適用されます。更には、事業上の利息と規定されているので、投資活動に係る利子は対象外とされています。但し、法人 (c corporation) については投資活動に係る利子も対象となります。また、floor plan financing interestとは、簡単に、自動車用の販売・リースの購入資金や購入した自動車が借入の担保とされているものとしています。

D.   規則案とフロースルー・パートナーシップ


2019年8月末現在、規則案が発表されています。以下はその規則案の内容となります。最終規則が発効されたら内容を更新します。

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原則として、アーニングス・ストリッピングルールはパートナーシップレベルで適用されます。パートナーシップでEBIが発生した場合、パートナーシップレベルで繰越するのではなくパートナーにそれを配分し(通常の課税所得と同じ方法で)、パートナーが繰越します。そして、翌期以降にそのパートナーシップから配分された過大課税所得 (excess taxable income ETI) から損金算入できる仕組みになっています。

また、パートナーは、EBIをパートナーシップの持ち分 (basis) のベースから差し引き、持ち分を売却する際に損金算入していないEBIbasisに足し戻します。

S法人の場合、基本的には上記のルールと似ていますが、EBIS法人レベルで繰越されます。

E.   GILTIFDIIとの兼ね合い


GILTIの計算上でてくる控除額はアーニングス・ストリッピングルールの調整課税所得には含まれませんが、FDIIはアーニングス・ストリッピング上の調整課税所得から控除されます。


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