税制改正とオバマケア
I. 2017年度税制改正後のオバマケア
2017年の大幅な税制改正では、オバマケアについても影響がありました。まずは、オバマケアの基本からおさらいして、税制改正がどのようにオバマケアを変えたのか見ます。
A. オバマケアのおさらい
通称オバマケア (Obamacare)と呼ばれていますが、正式にはAffordable Care Act (ACA) という医療保険改革制度は2010年、当時大統領だったオバマによって導入されました。
アメリカでは、日本と違って診療料金を自由に決められるため、医療費だったり医療保険料が高く、医療保険を払えない・医療保険に入らない人がたくさんいます。こうした問題の対策として医療保険の加入を義務づけることにより全体の医療費や医療保険料の高騰を抑止することを目的とする制度です。
義務が対象となるのは、アメリカ国民はもちろんのこと、グリーンカード保持者(永住権)や米国税務上の居住者です。米国税務上の居住者の判断はこちらを参照ください。
オバマケアで設置されたマーケットプレイス (marketplace)を通じて医療保険に加入していてその他一定の要件を満たす場合、税額控除 (premium tax credit) がとれる可能性があります。
その他一定の要件とは:
- 夫婦個別申告ではない (married filing separately)
- 税務上誰かの扶養者ではない
- 調整後総所得が(adjusted gross income) が一定の金額範囲内であること
Premium tax creditは、受け取った1095-Aを見ながらForm 8962を申告して控除を受けます。
B. オバマケアに関連する税務書類
医療保険に関する税務書類はフォーム1094と1095です。それでは、その違いを見ていきましょう。
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Form 1095-A:マーケットプレイス (marketplace)通じて加入している場合
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Form 1095-B:保険会社に直接加入している場合
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Form 1095-C:雇用主を通じて加入している場合
Form 1095は医療保険を提供している側が毎年2月までにIRSと被保険者に発行するものです。これらのフォームに保険加入期間や保険料などが確認でき、年末に確定申告をする際に必要となります。
Form 1094は1095のカバーレター(送付状)です。
C. 罰則 (penalty) - 被保険者
オバマケアによって医療保険の加入が義務づけられている人が加入しなかった場合、罰則が設けられました。
個人所得税の申告をする際に、違反金を計算して納税するシステムです。フォーム1040に添付するスケジュール4で計算・申告します。
2016年、2017、2018年の罰則金は:
- 大人一人につき$695
- 17歳以下の子供$347.5
一世帯 (per household)で最大:
①
$2,085;または
②
調整後総所得 (adjusted gross income)の2.5%
のどちらか大きい額と定められています。
また、一定の要件を満たす場合、罰則から免除されるケースもあります。例えば、海外在住、または低所得で申告義務がそもそもない方等です。
D. 罰則 (penalty) - 雇用主
オバマケアによって、50人以上の従業員を雇用している事業主は、従業員に対して医療保険を提供することが義務付けられました。従業員の定義は、基本的には週に30時間以上勤務する者とされています。
医療保険を提供しない雇用主は、罰金として$2,000(★注1)×従業員数(総従業員数-30人)を支払わなくてなりません。
また、医療保険を提供していても、それがaffordableでない場合も罰則金が課せられます。
違反した雇用主に対しては、IRSから罰則の査定書226-J
が送付され、対応が必要となってきます。
(★注1:罰則金額は毎年インフラ調整されます。)
E. 2017年度税制改正とオバマケア
2019年から医療保険に加入していない場合でも、オバマケアに係る罰則が$0となり実質ペナルティーが撤廃されました。ですので、2019年度から上記のC.のペナルティー部分が無効となります。
但し、ここで注意したいのが、雇用者側に課せられている義務は変わりません。引き続き医療保険を提供し申告書類を発行する義務があります。
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