アメリカの個人所得税・基本(1)
I. アメリカの個人所得税 |
A. 基本
アメリカではサラリーマンで給料所得しかない場合でも、日本みたいに年末調整がないため、基本的に個人で申告するシステムになっています。
では、誰が・何に対してアメリカの税金を支払わなくてはならないのか。まずは基本から取り上げます。
B. 誰が個人所得税を支払わなくてはならないの?
下記i.~iii.のいずれかに当てはまる場合、基本的にアメリカで個人所得税を申告・納税しなくてはなりません。
- 米国市民 (U.S. citizen)-アメリカの市民権を保有している人
- グリーンカード保持者
- 米国の滞在期間が以下の要件を満たす人(税務上、米国居住者 (U.S. resident)とみなされます):
①
米国滞在期間 (substantial
presence test) が、申告する年(1月1日〜12月31日)のうち31日以上;かつ
②
申告する年の米国滞在期間+申告する年の前年の米国滞在期間の1/3+申告する年の前々年の米国滞在期間の1/6が183日以上の場合
※②の183日を計算する方法に特例があるので注意が必要です。
C. 何に対して個人所得税はかかるの?
1.
米国居住者・米国市民
上記B.のi.~iii.を満たす人は、基本的に全世界所得(worldwide income)に対してアメリカの個人所得税がかかります。
全世界所得とは、アメリカ国内で得た所得はもちろんのこと、アメリカ以外の国で得た所得も、基本的にはアメリカで申告して税金を支払うことです。
但し、外国税額控除 (foreign tax credit)、外国役務所得控除 (foreign earned income exemption)や外国居住費控除 (foreign housing exclusion) が受けられる場合もあります。
外国税額控除とは、外国で既に税金を支払っている場合、二重課税を防ぐため、その所得に係るアメリカの所得税から外国で支払った税金を控除することです。個人の場合、Form 1116を提出します。(法人の外国税額控除はForm 1118)
外国役務所得控除とは、一定の要件を満たす場合、外国役務において得た一定の所得については、アメリカの所得税計算から控除されることです。Form 2555 若しくは2555-EZを提出します。Form 2555-EZの方が簡要バージョンとなっていますが、一定要件を満たさなくてはならない上に、外国居住費控除は取れないため注意が必要です。外国役務所得控除 foreign earned income exemptionについて詳しくはここを参照ください。
外国居住費控除とは、外国で居住に係る費用について、アメリカの個人所得税から費用として控除できることです。For 2555を提出します。地域ごとに上限金額が定められていますので、詳しくはForm
2555の説明書を参照ください。
一方で、米国非居住者は、アメリカを源泉とする所得のみの申告・納税が必要となります。
例えば、日本に住んでいる日本人が、アメリカに所有している不動産からの家賃収入、アメリカの会社からの給与所得、アメリカの企業からの配当所得等がある場合、アメリカで非居住者として個人所得税を納税・申告します。
また、別のケースでは、日本に住んでいる日本人が、アメリカから社会保険年金 (social security benefit)を受け取っていたとします。過去にアメリカで働いていた時に社会保険税を納めていた場合、一定の要件を満たす場合(就労期間など)は定年後にアメリカに住んでいなくても社会保険年金が受領できる仕組みとなっています。例えば、過去にアメリカで駐在員だった方がこういうケースに当てはまります。アメリカから受け取る年金はアメリカを源泉とする所得として取り扱われます。但し、日米租税条約において、年金などの所得は居住国でのみ課税されるという取り決めがあるため、基本的に日本に住んでいる日本人がアメリカの年金を受け取ったとしてもアメリカで確定申告(納付)する必要はありません。(年金以外のアメリカ源泉所得がある場合を除く)。
D. 申告義務の免除
所得が一定額に満たない場合、個人所得税の申告が免除されるケースもあります。毎年基準額が改訂されているためIRSのウェブサイトを確認することをお勧めします。
この記事についてや個人所得税に関してのご相談はこちらへお問い合わせください。