I.                   基本と仕組み

租税条約(income tax treaty)とは、簡単にまとめると二重課税を回避する事を目的とした二国間の条約です。

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日米租税条約の適用例を見てみましょう:

  • アメリカの市民でアメリカ在住のA氏が、日本の上場株式を1株保有していたとする。
  • 当該株において配当10,000円(為替$100とする)が支払われたケース。
  • A氏は、アメリカの会社から給料収入$500,000を得ている。


A.                 日本での課税は?


基本的に、配当所得は日本で源泉税の対象となります。通常、日本での配当所得に係る源泉税率は約20%です。

B.                 アメリカでの課税は?


A氏はアメリカ市民・アメリカ在住ですので、全世界所得にアメリカの所得税がかかります。ですので、当該配当所得に対してももちろんアメリカの個人所得税が課せられます。

C.                 租税条約の適用と日米の課税


① 日本の国内法で20%の源泉税の対象となる配当所得ですが、日米租税条約によって一定要件を満たす配当に係る源泉税は0%〜10%と減税されています。

A氏の場合、10%が適用源泉税率と考えられます。

結果として、日本では10,000 円×10%=1,000円 ($10)の源泉税が徴収されます。

(逆にアメリカから日本へ支払う配当等の場合、原則的にアメリカの国内法によって30%の源泉税の対象となります。)

② 次にアメリカでの個人所得税を計算する上で、当該日本企業からの配当$100を含めなければなりません。

アメリカの個人所得税率は累進税のため、A氏の該当する税率で課税されます。個人所得税率について詳しくはこちら

$500,000だと税率35%です。

A氏のアメリカの個人所得税の計算方法:

(i) まず、$500,000給料+$100=$500,100が総所得となります。
(ii) $500,100×35%=$175,035がアメリカ所得税となりますが
(iii) 日本ですでに$10の源泉税を支払っているので、アメリカで納税するのは$175,025 ($175,035 - $10)となります。


上記の(iii)が外国税額控除 (foreign tax credit)といって、アメリカで課せられる税金から、既に当該配当に対して日本で支払った源泉税が控除される仕組みで結果的にアメリカの国内法で二重課税を回避するようになっています。

上記のように、日本とアメリカ両国で課税がされることを二重課税といいます。それを軽減・回避しようとする条約が租税条約です。




次の記事で詳しく日米租税条約の内容を見てみましょう。







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